ドクターコラム
根管治療後に歯冠修復するまでの経過時間、修復様式による歯の生存率への影響を調査した文献
参考文献
Eight-Year Retrospective Study of the CriticalTime Lapse between Root Canal Completion andCrown Placement: Its Influence on the Survival of Endodontically Treated Teeth
Isaac Pratt, DDS, MS,*Anita Aminoshariae, DDS, MS,*Thomas A. Montagnese, DDS, MS,*Kristin A. Williams, DDS, MPH,†Navid Khalighinejad, DDS,*and Andre Mickel, DDS, MS*
J Endod2016;42:1598–1603
今回のコラム
調査方法
・2008年1月1日から2016年1月1日の間に大学院生が顕微鏡下で行った歯内療法科での根管治療を受けた永久歯882本
・根管治療から修復物を装着するまでの期間、修復物の種類とその歯の8年後の生存率の関連を調査
結果
・50%がフルカバレッジのクラウン、23%がコンポジットレジン、アマルガム充填、27%が最終修復なし
・全体では105歯(11.9%)が8年の間に抜歯された
・フルカバレッジで修復された歯の8年生存率は84%だった
・コンポジット、アマルガムで修復された歯の8年生存率は71%だった
・最終修復しなかったはの8年生存率は58%だった
・根管治療後4ヵ月を超えて修復された歯は、4ヵ月以内に修復された歯 の3倍の確率で抜歯された
・根管治療後18ヶ月に抜歯の割合が急上昇した
考察
・抜歯の原因の多くは歯冠破折で、修復物の種類が根管治療後の歯の生存率に大きく影響する
・築造のポストの有無は生存率に影響は与えない
・根管治療後の修復のタイミングは歯の生存率に大きく影響を与える
解説
根管治療は根尖性歯周炎(根の先の病気)の予防と治療のために行われます。根管治療は最終目標である歯の長期生存のためのひとつの過程で、長期で歯を機能させるためには根管治療と同レベルで最終修復が重要です。 根管治療後の臼歯部は、咬頭被覆(クラウン、オンレー)したものとしないものを比較すると、咬頭被覆しなかった歯の喪失率は5~6倍高くなると報告されています。今研究でも、フルカバレッジ(咬頭被覆)したものは有意に生存率が高いことがわかります。 今研究の興味深い点は、根管治療後の修復のタイミングに注目しているところです。根管治療後のトラブルで多いのは歯冠、歯根破折で抜歯の理由に直結します。4ヶ月以内に修復しないと破折により抜歯となる確率が3倍近く上がるというのは驚きですが納得もいきます。根管治療後というのが今研究ではスタートになってますが、おそらく根管治療に着手してからそのリスクは上がると思われるので、根管治療に着手してから修復まで時間をかけることは、感染の管理など様々な視点からみても有益ではないと思われます。
八王子・西八王子の歯医者 レイス虫歯クリニック
院長 池田 洋之