自家歯牙移植

失った歯を自身の歯で
補う歯科治療
自家歯牙移植
虫歯や歯周病、事故などにより歯を失ってしまった場合には、ブリッジや入れ歯、インプラントなどの治療を行って元の状態に復元しますが、その際のもう一つの治療法として、歯牙移植があります。
残念ながら抜歯になってしまった場合、親知らずや噛み合わせで機能していない歯などを移植して補います。それらの歯を一度抜いてから、他の欠損した部分に移植する事によって機能を回復させる事ができます。
自身の歯を使うことの重要性

自家歯牙を使うことの最大の重要性は、例えば奥歯が既に無くなっている方でも親知らずを移植することで咀嚼能率を格段にあげることが可能で、人工物ではないご自身の歯を利用できるのが最大の利点です。
歯周病が進行してしまい、移植をしたい場所の骨の量が少ない方や移植する歯が小さい方には不向きな方法ですが、一定の条件さえクリアできればインプラントの前に検討されてもよろしいかと思います。
- 治療期間
- 1日
- 治療回数
- 1回
自家歯牙移植に関しての注意点
各種健康保険の適用外となります。
親知らずなど、移植する歯(提供歯/ドナー歯)や移植をする場所の骨の幅が必要となります。
自家歯牙移植の3つのメリット
-
01
周囲の歯への負担がない
残念ながら抜歯になってしまった場合、留め具のある部分入れ歯やブリッジなどのように、健康な歯を削る必要がないので周囲への負担がありません。
-
02
天然歯のため歯根膜が機能する
歯根膜を一緒に移植することで、細菌によるダメージを受けにくく、天然の状態と同様の血液循環も回復できます。これはインプラントなどの人工歯では望めないメリットです。
-
03
悪くなった時に抜歯ができる
インプラントが悪くなったとき、それを除去するには手術が必要になります。矛盾したように感じるかと思いますが、悪くなった時に抜歯が比較的に簡単にできることは、インプラントと比較した場合、大きなメリットだと考えています。その後にインプラントを検討することも可能です。
レプリカを用いた自家歯牙移植

自家歯牙移植の成功の鍵は、移植する歯の根の周りの歯根膜という組織をいかに保存して移植できるかにあります。歯根膜は、歯を抜いた状態で時間とともに悪くなっていきます。歯根膜が悪くなってしまい移植をすると、術後にアンキローシスなどのアクシデントが起こります。ですので、移植する歯は抜歯をしたのち、速やかに受容側に設置することが求められます。現在、術前にCTのデータから移植する歯の実寸大のレプリカを作製し、移植の成功率を高める試みを行なっております。これにより、移植する歯を抜歯してから受容側への設置が非常に速やかに行えるようになり、良好な結果を得られています。
自家歯牙移植と
インプラントとの違い
-
自家歯牙移植
- 適応症
- 自家歯牙移植はインプラントより受容側の骨量が必要なため、インプラントより適応症は狭くなります。
- ドナー歯
- 必要
- 外科処置の回数と箇所
- 1回、2カ所同時に行う
- 骨の量・顎堤の幅
- 最低限必要
- 適応能力
- 歯の移動など体の変化に適応しやすい
- 若年者への治療
- 対応可能
- 高齢者への治療
- 対応可能
- 5年生存率
- インプラントより低く自家歯牙移植は90%ほどと言われています。移植歯は通常神経が死んでしまいますので、歯の根が割れる、被せ物虫歯等のリスクは未処理に比べ、増加します。また経年的に歯の根の吸収をおこす事があります。
- 成功率
- 手枝は煩雑で難易度も高いため、成功率は劣ります。
- 治療期間
- 3ヶ月〜
- 費用
- 自家歯牙移植はインプラントより安価に収まります。
- 注意点
- 手術の難易度が高い、歯根破折、歯根吸収のリスクがあります。
-
インプラント
- 適応症
- 骨の量に対して制限がありますが、骨を造成する事で、適応範囲を広げる事ができます。
- ドナー歯
- 不要
- 外科処置の回数と箇所
- 1〜2回行う事がある、1〜2カ所
- 骨の量・顎堤の幅
- 歯の移動や咬み合わせの変化に対応するため、細やかなメインテナンスが必要
- 適応能力
- 対応可能
- 若年者への治療
- 対応可能
- 高齢者への治療
- 対応可能
- 5年生存率
- 5年間機能する割合は97%以上。経年的に骨の吸収が起こる可能性があると言われています。その骨の吸収が直ちに機能に影響を及ぼすわけではありません。
- 成功率
- 一般にインプラントの方が成功する割合は高いと言えます。
- 治療期間
- 2〜8ヶ月
- 費用
- 保険適用外
- 注意点
- インプラントが悪くなった時の対応が難しい、隣在歯が抜歯となった際の対応が難しいとされます。
親知らずの活用について

自家歯牙移植は適応するドナー歯(移植用の歯)が必要となります。一般的には親知らずなどを使用する場合が多いでしょう。親知らずでなくても、お口の中で噛み合わせなどに関与していない、影響のない歯がこのドナー歯となります。
ただ、親知らずは必ず抜歯をしなければいけないということはありません。親知らずの抜歯を考える際は、将来的な自家歯牙移植の可能性も含めて検討されることをおすすめいたします。